研究紹介
【よりよい人と自然のかかわりを現場の社会から考える】
「環境問題」は、必ず環境と社会の相互作用のなかで発生します。だから、その解決のためには環境と社会の関係を分析しなければできません。それを人や社会の側から明らかにするのが環境社会学や環境倫理学です。
この研究のもっとも重要な役割は、表面的な「問題っぽいもの」に目を奪われるのではなく、より本質的な「環境問題」の正体をちゃんと明らかにすることで、対策が「的外れ」にならないようにすることです。そのため、研究においては社会学だけでなく民俗学、文化人類学、政策学などの人間社会にかかわる周辺領域の知見が用いられますし、自然環境を理解するために生態学や工学、農学などの素養も求められます。
「人と自然のかかわり」があるところすべてが研究対象になるので、農林漁業はもちろん、自然再生と地域社会の関係、天然資源管理、市民参加型調査、在来作物の保全、動物園など守備範囲は広いです。私自身は茨城県霞ヶ浦、佐賀県松浦川、福井県三方五湖、宮崎県綾ユネスコエコパーク、静岡県内では、駿河湾サクラエビ漁、浜名湖、遠州横須賀などで調査や実践をしてきました。
その成果として「人と自然のかかわり」を耕起(Cultivate)して、未来に向けて再生(Regenerate)することが私の研究の目標です。
授業紹介
環境共生社会論
そもそも「環境問題が解決する」とはどんな状態なのでしょうか。実は、環境問題の解決には「人と自然の共生」だけでなく「人と人の共生」という2つの「共生」を考えることが同時に必要なのです。
この講義では、環境社会学や環境倫理学のこれまでの成果を基にして、自然資源の利用や自然保護、そして公害問題などの実際の事例を紹介しながら、この2つの「共生」の必要性を理解し、現実に起きている環境問題を2つの「共生」の問題として分析、対応するための「ものの見方」を身に着けることができるようにすることを目指します。
受験生へのメッセージ
大学で行われている研究というのは「これまでわからなかったことをわかるようにする」、つまり新しいことを見つけ出すという「クリエイティブ」な挑戦そのものです。大学の先生は、その挑戦を日々し続けています。ぜひ、そこに好奇心と想像力と勇気をもって飛び込んできてください。知識を増やす(勉強する)ことはその挑戦のための手段でしかありません。
大学はクリエイティブな挑戦のための、環境や設備、チャンス、刺激に満ちています。きっと、みなさんの人生を豊かにしてくれるでしょう。