斉藤 俊貴

Saito Toshiki

生命圏循環共生学コース

天文学、宇宙物理学、データ駆動天文学

静岡大学教員DB

研究紹介

電波天文学・赤外線天文学

 私たちの目で見ることができる光は、「電磁波」のごく一部である。携帯電話などの通信に使われる「電波」、ヒーターやリモコンに使われる「赤外線」、虹など我々の目が見ることができる「可視光」、日焼けの原因になる「紫外線」、レントゲン写真に使われる「X線」、これら全てが「電磁波」と呼ばれる。このうち、最も波長が長い「電波」や「赤外線」を観測し宇宙を研究する学問を電波天文学、赤外線天文学と呼ぶ。
 電磁波の波長とエネルギーには反比例の関係があるため、X線を観測すると超高温(~1000万℃)、赤外線や電波を観測すると超低温 (0℃以下)の天体現象を捉えることができる。特に、0℃程度まで温められた炭素や珪素などを主成分とする塵(星間塵)からの黒体放射を遠赤外線で、低温の分子ガス(一酸化炭素やシアン化水素、メタノールなど様々な分子からなるガス)からの放射を電波で観測することができる。これら星間塵や低温分子ガスが互いに重力で集まって凝縮することで新たな星が生まれると考えられている(「星形成」と呼ぶ)。電波天文学・赤外線天文学においてこの「星形成」は1つ大きなキーワードである。

宇宙の物質循環と銀河進化

 分子ガスや塵の塊から星が生まれ、寿命を迎えた星はその周囲に自身の構成物質をばら撒き、そしてまた新たなガスや塵の塊が生まれ次世代の星が作られる。銀河の中で繰り広げられている星形成活動を中心とするこの「物質循環」は、我々人類の誕生にも密接に関わっているが、その詳細は未だよくわかっていない。この物質循環が我々人類に関わっていることを示す証拠の1つとして、血液中の鉄が挙げられる。鉄などの重元素は、宇宙の始まりの時点では存在せず、恒星の中で合成され、その星が超新星爆発を起こすことで周囲に撒き散らされる。つまり、我々の住む天の川銀河が物質循環を脈々とおこなってきたことで、我々人類は誕生したと言っても過言ではない(かもしれない)。
 我々の研究グループではこの物質循環、そして星形成に着目して、宇宙に存在する様々な銀河のガスや塵、星形成領域などを研究している。この物質循環は天の川銀河以外でも普遍的に起きていることがわかっているが、銀河の特徴よって大きく異なることが近年示唆されている。銀河がどのように形作られ、進化するのか?どうして現在の宇宙には多種多様な特徴を持つ銀河が存在するのか?そして、天の川銀河の中でどのように人類は生まれたのか?このような疑問を解き明かすためには、銀河を構成する物質の進化(循環)を詳細に調べる必要がある。そのため、世界中の望遠鏡を使った観測や理論シミュレーション、データ解析手法の開発などを国内外の研究者と連携して進めている。

近傍渦巻銀河 M74の多波長電磁波観測結果

近傍渦巻銀河 M74の多波長電磁波観測結果。(左) アルマ望遠鏡による電波(分子ガス)の画像とハッブル宇宙望遠鏡による可視光(恒星)の合成画像 [Credit: NRAO/AUI/NSF, B. Saxton: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); NASA/Hubble]。(中) ハッブル宇宙望遠鏡による可視光(恒星)の画像 [Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Janice Lee (STScI), Thomas Williams (Oxford), PHANGS Team]。(右) ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による赤外線(星間塵)の画像 [Credit: 中と同様]。ハッブル宇宙望遠鏡で見えている影の領域からの電磁波を、アルマ望遠鏡(分子ガス観測)やジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(星間塵観測)で観測できている。つまり可視光を遮っている領域では、分子ガスや星間塵が豊富に存在していることがわかる。

授業紹介

基礎数学、統計数学入門

グローバル共創科学部では、データサイエンスに係る知識・手法の教育が特徴の1つとなっている。しかしその理解のためには、高校数学よりも高度な線形代数や微積分の知識が必要となる。そこで本講義では、データサイエンスを学ぶ上で必須となる大学初等レベルの基礎数学の解説を行う。文系・理系双方の学生が受講するため、高校で数学を積極的に学んでこなかった学生にも理解できるよう最大限配慮する。また、本講義に加えて補習講義として統計数学入門も併せて開講する。

受験生へのメッセージ

天文学は他の多くの学問とは違い、その研究対象に触れたり近くで見たりすることができません。限られた手法・限られたデータを駆使して意味のある情報を抜き出し、新たな発見または解決策を見出す学問です。天文学研究を通じて得た経験・スキルは、色々な分野に応用できる力があると考えています。そんなスキルを身につけたい方、お待ちしています。そんなことより天文学の研究がしたい方、宇宙の写真や話が好きな方も大歓迎です。

大学は、自分がやりたいと思ったら大抵のことはできる場所だと思います。大いに学び、遊び、脇道に逸れ、失敗し、成功し、楽しんでください!

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