太田 美帆

Ota Miho

国際地域共生学コース

社会学、スウェーデン福祉国家制度と市民社会

静岡大学教員DB

研究紹介

スウェーデンはヨーロッパ北部にある人口が約1000万人の国です。現在では「豊かな福祉国家」と言われていますが、もともとは厳しい冬とやせた土地のため十分に作物をとることのできない貧しい国でした( 20世紀初頭には人口の約4分の1 が豊かな生活を求めて海外移住するほどでした)。私はスウェーデンの人々がどのように協力しながら現在の社会を作り上げてきたのか、また今後、どのような社会を作ろうとしているのかに関心があります。
第二次世界大戦後の福祉国家としてのスウェーデンの特徴は、政策を通して公的制度を充実させた点と希望者すべてが働けるようにした点です。たとえば女性の就業率を上げるという政策目標を設定したとき、その手段として家族や市民団体による子どもの見守りではなく、公立の保育園や学童保育を普及させました。また税制改革、育児休業制度の導入、職業訓練やジェンダー教育、雇用制度など、その実現に向けて包括的に社会制度を改革しました。その結果、多くの人が働けるようになり、流通するモノやサービスが増え、税収が増え、その税金を使ってさらに公的制度を充実させるという循環ができました。このようにして皆が働き、皆が恩恵を受けるという現在のような豊かな社会を作っていきました。
しかし、結果はよいことばかりではありません。人々が働く場所や教育機会を求めて都市へ移動した結果、全国各地に過疎地域が生まれました。また冷戦後のグローバルな動きとも無縁ではいられません。研究では、(1)過疎地域に住む人々が地域での生活を続けるため、1980年代以降に保育園、小学校、介護施設、店舗、公共交通などを自ら維持運営した動きを取り上げ、人々がその実現に向けて行政や専門家とどのように協力しているのかを明らかにする。(2)1995年のEU加盟により、過疎地域での取り組みや行政活動がどのような影響を受けたのかを明らかにする。また(3)2010年代以降、スウェーデンでは中東・アフリカ地域からの移民・難民を多く受け入れているため、受けた教育や社会習慣の異なる人々をスウェーデン社会に受け入れるためどのような就労支援を行っているのか、新たな市民である移民・難民はどのように社会に適応しているのか、を研究しています。
以上を通してスウェーデン社会を例に、時代の変化に応じて社会がどのように変化しているのか、人々がどのように協力しながらそのような変化を作っているのかを考察しています。
スウェーデンの過疎地域で、村に協同組合型保育園をつくる住民

(写真:スウェーデンの過疎地域で、村に協同組合型保育園をつくる住民。この日は、住民総出で保育園の建物と庭の清掃をした)

授業紹介

コミュニティ基礎論、コラボラティブ・ワークス

多くの先生方とともに「コミュニティ基礎論」と「コラボラティブ・ワークス」を行います。
「コミュニティ基礎論」ではコミュニティを社会的課題を解決するための集まりととらえ、コミュニティの特徴を理解するとともに、地域医療・ケア、スポーツ、環境テクノロジー、製品開発など主に日本の例を取り上げて課題解決の方法を学びます。「コラボラティブ・ワークス」では、実際に社会的課題の生まれる現場とかかわりながら、課題発見・課題解決の方法を体験的に学びます。
これらを通して、未来社会を共創的に構想し、実現できる人になってください。

受験生へのメッセージ

コロナ禍で人や社会の動きが制限されましたが、この時期は社会の問題点を改めて意識し、人と社会と自然の新たな関係を作り直すための準備期間でもありました。みなさんもそれぞれの興味関心を切り口にして、グローバルで幅広い観点から新たな時代を切り拓いてください。

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