研究紹介
経済を支える金融、交通をヨーロッパとの比較から考える
金融市場・通貨統合
モノやサービスの取引に欠かせない「お金」、その価値の維持=金融政策や、「お金」の循環すなわち金融・銀行の機能をテーマに、国の単位を超えて統合しようとしているヨーロッパ、特にかつて社会主義という異なる経済体制だった中東欧諸国を研究対象としています。国の独立から16年で共通通貨ユーロを導入したスロヴァキアと、依然として独自通貨を使い続けるチェコ、ポーランド、ハンガリー、EUに加盟したいウクライナ等を分析しています。
持続可能な公共交通のあり方
静岡県内でも赤字経営の岳南電車、天浜線、大井川鐡道の存続が話題になりますが、国内を見渡すとJR各社や地方私鉄で「赤字」だとして「廃線」が進み、2000年代入り以降東京=博多間を上回る1275キロもの鉄道が廃止されています。一方ヨーロッパでは国境を越えた経済統合での人、モノを運ぶ手段として鉄道を重視し、そのネットワークを維持するためEU共通の政策を導入しています。EUでは、鉄道インフラは道路と同様に各国政府がEUの資金も利用して整備・維持し、鉄道の運行は最も効率的な運営となる会社と入札で契約したり、複数の会社の参入で競争を促す「上下分離」「オープンアクセス」を義務付けています。日本では絶滅危惧種となった夜行列車がヨーロッパでは近年新規参入が相次いでおり、私鉄がユニークなビジネスモデルとして展開してきた日本と比較・対照させた研究をしています。
ヨーロッパの小国の生存戦略
日本は自動車生産大国とされていますが、人口1人当たりの自動車生産台数が世界1位、2位はどこでしょうか?実は中欧のチェコ(1位)、スロヴァキア(2位)です! 私が主として研究対象としているのは、ポーランド、ハンガリーを加えた中欧諸国ですが、人口は最大のポーランドでも4000万人弱、スロヴァキアは500万人程度です。また現在のような国の形になったのは第一次世界大戦以降。しかも第二次世界大戦に前後して国が消滅させられたり、国土が「移動」「縮小」させられたり、さらにはソ連の影響下で戦後は社会主義経済を導入させられ、西欧とは発展が大きく遅れました。国際情勢に翻弄されてきたヨーロッパの小国が、EUに加盟し、投資を呼び込んで自動車大国に成長するなど、そのメリットを享受しつつも、今後どのように国民経済を発展・展開し生き残っていくのか、に関心を払っています。
授業紹介
授業名:国際地域共生概論C(欧米)
この授業のヨーロッパ部分を担当します。経済から始まり政治的にも「統合」を進めてきたヨーロッパ。EUは27か国に加え加盟を求めている国が9つありますが、そもそもヨーロッパとは何か、統合のメリットは何か、その問題点・課題は何かを考えます。またヨーロッパを構成する代表的な国々を、「国民国家」としての国の成り立ちから分析していきます。そこでは私たち日本が属する「アジア」との比較の視点も養っていきます。
受験生へのメッセージ
経済を大学で学修することは、地域や世界をいかに豊かにしていくか、というテーマのみならず、経済というプリズムを通じて、地域やグローバルな課題に様々な側面からアプローチ、分析をする、学際的な視点が涵養されます。経済学に対して効率性重視への批判もありますが、「合理的」に物事を考える、思考の基礎的なツールが身につく学問でもあります。グローバルな、またはローカルな課題・関心分野を、理論と実際のフィールドに出て学んでいきましょう。