小池 亨

Koike Toru

生命圏循環共生学コース

発生生物学

静岡大学教員DB

研究紹介

「動物の体は個体の発生過程でどのように作られていくのだろう?」「 損傷を受けた組織はどのように修復・再生していくのだろう?」「再生能力の高い動物と低い動物の違いはなんだろう?」「再生できる器官とできない器官があるのはなぜだろう?」 このような素朴な疑問が頭に浮かんだことが,皆さんにも一度はあるのではないかと思います。動物の「発生」と「再生」は生物学の中でも古くから多くの人を魅了し続けている,謎多き現象です。
私の研究室では,動物の体を構成する器官の「発生と再生の仕組み」に興味を持って研究を行っています。主な内容は,脊椎動物(ラットやマウス)の肝臓の発生や再生機構,および棘皮動物のナマコを用いた消化管再生機構の解明です。肝臓はその7割程を手術で切除しても,残りの部分の肝細胞等が増殖して数週間後には元の大きさに戻ることがよく知られています。他にも,誤って薬を大量に飲んだ際などには多くの肝細胞が死んでしまうことがあります。その場合には「肝前駆細胞」と呼ばれる特殊な細胞が増殖して肝臓の再生に寄与します。私たちはこの後者の肝再生機構に注目しています。この肝前駆細胞の増殖・分化の機構を明らかにし,それを人為的かつ安全に制御できるようになれば,肝再生医療に貢献できると考えています。一方,食用としても知られているマナマコは,外敵から攻撃を受けると消化管を自切してまるごと放出してしまいます。しかしその後,その失われた消化管を数週間のうちに完全に再生することができます。内臓器官を自切・放出し,それを完全に再生する能力は,多様な動物の中でも極めて稀なものです。この再生に関わる様々な現象,特に組織構築における細胞の増殖や分化,細胞同士のコミュニケーション等に関わる分子機構の解明を目指しています。

授業紹介

生物多様性保全論

人間の生活は深く自然環境と関わり合っていて,自然の恵がなくては人間社会は成り立ちません。現在,その自然環境が人間の社会活動によって大きく破壊され,とりわけそれを育んできた「生物多様性」が危機的状況に陥っています。この授業では「生物多様性とはなにか」,「陸及び海洋の生態系と生物多様性」,「地球レベルでの物質循環と人間生活との関わり」,「人間社会と自然環境・生物多様性の関係性」,「生物多様性保全の取り組みと制度」といった内容について概説します。この授業を受けて,持続可能な生物多様性の保全と自然環境の再生についての理解を深め,それに対する取り組み方を自ら考えていけるようになって欲しいと考えています。この授業は,理学部の地球科学科の教員と共同で開講します。

受験生へのメッセージ

大学では主体的に行動していくことが大事です。受け身にならずに,自分が興味のあることを多角的な視点から深く掘り下げていってください。生命科学系の研究に興味を持っている人や,その研究手法を用いて新たな分野を開拓したい人などとの「共創」を楽しみにしています。

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