動物の器官再生のメカニズムを探る

私の研究テーマはこんな感じです
動物の体を構成する器官が損傷を受けた場合,それを再生する能力は動物種や器官によって実に様々です。こうした再生能力の違いはどうして生じるのでしょうか?私の研究室では「再生現象の様々な謎」を明らかにするために,棘皮動物のマナマコを用いて,消化管や生殖巣等の再生メカニズムについて研究しています。マナマコは再生能力が高いことで知られています。ユニークな特性を持っていて,刺激を強く与えると消化管を自切して,それを体外に放出してしまいます。でもその失われた消化管を,たった数週間で完全に再生することができます。こうした再生過程における細胞の動きや,遺伝子の発現変動,組織の再構築の様子について調べています。
こんなこと知りたい、話し合いたい、教えてほしい!
1. 同じ個体の「体の中」を,生きたまま,再生経過を追って観察したい! 2. 研究のモデル生物以外に,身近なところに何かユニークな再生現象を持つ動物って居ませんか?
私、こんなことできます。このことなら私に聞いて~
1. 組織学的な解析ができます(一般組織学・免疫組織化学・in situハイブリダイゼーション等)。 2. 細胞培養を用いた各種遺伝子改変ができます。
“動物の器官再生のメカニズムを探る” に対して4件のコメントがあります。
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動物の危険回避の方法に興味があり、説明いただいたマナマコの特性を大変面白く感じました。再生現象とは直接関連していないのですが、消化管の放出は防衛行動としてどのように機能するのでしょうか。また、放出を行う刺激とそうでない刺激を弁別しているのかといった疑問を持ちました。
コメントありがとうございます。一般によく言われている「お話」として,「魚などに突かれた時に腸を放出することで,(餌として)魚がそちらに気を取られている間に逃げる」,などというのがあります。実際に食べるのかどうかはわからないのですが(いつか試してみたいと思っています),逃げ足もそれほど早い動物ではないので,真相はどうかな?と思っています。むしろ,内臓を放出する時に洗剤様の毒素を一緒に放出するので,そちらが本来の防衛に働くのではないかと思います。ちなみにその毒素は,人にとってはさほどきついものでもなく「水虫の薬」としても使われています。ちなみに,ナマコの防衛反応は種によって大きく違っており,内臓を放出する種は一部です。粘着糸みたいな物を放出する種も多いです。刺激に対する内臓放出応答は神経反応を介しております。おそらく強さやその持続性が大事です。ある程度以上の刺激を受けると放出するようです。
ナマコが再生能力が高い、というのはなぜなのでしょうか。細胞そのものの活性がもともと高いのか、ナマコの身体が再生モード?に入ると活性を高くするような条件を整えられるということなのか…。その再生能力の高さを活かした「細胞の生産」を考えようとするとナマコ(細胞)のポテンシャルは高いように思います。
マッチング希望をいただき,誠にありがとうございます。なまこは再生能力が高いのですが,再生のモデル生物としてよく知られている「プラナリア」のように「体中に幹細胞があって常に増殖している」というわけではありません。消化管の再生の場合には,刺激に応じて消化管を自切・放出した後,数日するとその切り口部分や消化管が繋がっていた腸管膜の切れ端部分で細胞増殖が盛んに起こることで,消化管が再生していきます。餌を食べずに再生しますので,体壁部分に蓄えた成分をうまく利用して再生のエネルギーにしていると考えられます。どのようなシグナル分子が細胞増殖を誘導し,どのような成分をどのように受け渡して細胞を増やしていくのか,とても興味を持っています。詳しいことをまた個人的にでもお話しできれば幸いです。